STUDY ABROAD

心臓血管外科 新谷 悠介

Queen Mary University William Harvey Research Institute留学記

新谷 悠介
新谷 悠介
新谷 悠介
新谷 悠介

2014年12月~2016年11月までイギリス、ロンドンのQueen Mary University William Harvey Research Instituteに2年間留学しておりました。私が所属していたTranslational Cardiovascular Therapeuticsは、大阪大学心臓外科出身の鈴木憲教授のもと、様々な研究を行っていました。
主要プロジェクトの1つは「Bioengineering的手法を用いた間葉系幹細胞による心筋再生修復療法」であり、基礎研究から臨床応用までの開発を行っていました。特に細胞移植法に関しては、新しいbiomaterial を使用した手法を考案し、早期臨床応用を目指し基礎・前臨床研究を包括的に行っていました。また自分が担当していたプロジェクトは、心筋梗塞後にマクロファージが重要な働きをすることが知られており、M2マクロファージをupregulateさせ心筋梗塞後心筋の修復を促進させる研究を行いました。マウスの心筋梗塞モデルを作製し、M2マクロファージを誘導し、心機能評価や梗塞心筋の回復具合を評価しました。日本にいる間は、全くやった事のない研究で、うまくいかないことの方が多かったですが、なんとか結果を残すことができました。日本にいる間は臨床に追われる生活でしたが、異国で臨床から隔絶した環境で実験に没頭でき、素晴らしい経験をすることができました。時々はラボを抜け出し、イギリスにたくさんあるPubでビールを飲みながら、ラグビー日本代表の応援をしたり(ラグビーワールドカップがイギリスで開催されましたので)、ウインブルドンにテニスを見に行ったりと非日常を満喫しました。また、週末は基本的に休みでしたので家族との時間を確保することができ、美術館、博物館めぐり、コッツウォルズ、湖水地方などにも出かけることができました。さらにイギリスはヨーロッパの他の国にも行きやすく、イタリア、ドイツ、フランスなど様々な国に旅行することができました。
COVID-19の影響で海外で生活ができる日がいつになるかわかりませんが、日本を離れ全く違う環境で生活する経験は得難いものと思います。我々の医局は国内外の施設で研鑽を積んだ医局員が多数在籍しており、辛かったことは忘れて皆楽しかった思い出を話してくれます。未知の世界での様々な経験、新たな出会いが、その後の人生に大きなプラスをもたらしてくれるものと思います。

心臓血管外科 古野 哲慎

米国アトランタ エモリー大学留学記

古野 哲慎
古野 哲慎

2018年7月から2020年3月まで米国アトランタにあるエモリー大学に留学しました。私が所属していたのはエモリー大学胸部心臓外科が管轄するCardiovasucular research at the intersection of surgery and engineeringというラボでした。
Dr.Padala Muralidharというインド人のAssistant professorがPrinciple Investigatorを務めており、虚血性僧帽弁閉鎖不全症による心不全の構造解析と治療法をメインテーマとしていました。研究内容は多岐にわたっていましたが、私自身はラットでの心筋梗塞モデル、僧帽弁閉鎖不全症モデルを用いた自分の実験を行いながら、大型動物の手術を手伝う仕事をしていました。動物実験といっても人間に行う手術と同等の手術室で道具や機械も最新のものが使用でき、実験のスケールの大きさに大変刺激を受けました。日本での業務と大きく異なる業務内容であったため大変苦労しましたが、国際学会での発表の機会にも恵まれよい勉強となりました。また研究者がどのようにグラントを取って、研究者として名前を売っていくのかをボスを通してみることができ、グラントで動く金額の大きさにも大変驚きました。アメリカ人のみでなく、様々な国から来ている人との交流は勿論のこと、アトランタには日本人の研究者も多く留学されており、企業からの出向で働いている日本人も多く、留学中に多種多様な人と接することができたことも良い経験になりました。家族と過ごす時間も日本とは桁違いに多く、これも大変貴重な時間でした。なによりも海外で家族とともに生活するということを経験できたことが自分にとっては今後の人生において貴重な経験となったと最近では感じています。
外科医に留学が必ず必要なのかどうかは未だに私も答えはでませんが、日本と異なる環境や文化の中で生活することは、新たな価値観を与えてくれるのは間違いないと思います。当医局では、基礎、臨床を問わず、留学をされた先輩方が数多くおられ、色々なアドバイスをもらうことができますし、留学希望者を積極的にサポートしてくれます。学生さんや先生方で留学を希望されている方は気軽に相談してください。

消化器外科(大腸) 藤吉 健司

埼玉県立がんセンター研究留学記

藤吉 健司

私は2015年4月から2017年3月までの2年間(医師6-7年目)に埼玉県立がんセンター腫瘍診断・予防科へ研究留学の機会をいただきました。埼玉県立がんセンター腫瘍診断・予防科では、遺伝性腫瘍(特にLynch症候群や遺伝性乳癌卵巣癌症候群など)に対する遺伝外来・カウンセリング外来や遺伝学的検査・診断を行っています。
私はこの2年の留学期間で、研究の基礎知識や基礎技術を学びました。主にDNA/RNA抽出、PCRの原理や手技、遺伝子解析(サンガーシークエンスから次世代シークエンサーまで)、生物統計学的手法や統計学的手法なども学ぶことができました。さらに、臨床面では遺伝外来やカウンセリングの経験をさせていただきました。埼玉県立がんセンターでは、Lynch症候群の拾い上げを目的として全例の大腸癌患者に対してMSI検査を実施しています。全国屈指のMSI大腸癌データベースを所有し、このデータベースを駆使した研究を行っていました。私もこのデータを用いた研究を行いました。2年間で国内学会だけでなく、海外学会での発表の経験や3本の筆頭論文を発表することができました。
久留米大学外科学講座は、手術・臨床と研究の両立を目指した“academic surgeon”の育成を目指しています。私の2年間の国内留学の経験は、academic surgeonとしての基礎を構築した期間だと実感しています。臨床や手術に対する知識・経験でなく、日常臨床を学術的側面からアプローチができる視点を得ることができました。この留学経験をきっかけに、久留米大学外科学講座においてもすべての大腸癌患者に対しMSI検査を開始しLynch症候群の拾い上げを行っています。また、遺伝性腫瘍外来もスタートし、Lynch症候群だけでなく遺伝性乳癌卵巣癌症候群などの様々な遺伝性腫瘍症候群の外来やカウンセリングも行っています。さらに、Lynch症候群や消化管ポリポーシス症候群の多施設共同研究へ積極的に参加しています。九州(特に筑後地区)において、遺伝性腫瘍は今後さらなる発展が期待できる分野です。久留米大学外科学講座は、この分野のさらなる発展に貢献できるよう尽力しています。

ボストン研究留学記

藤吉 健司
藤吉 健司
藤吉 健司
藤吉 健司

私は2018年4月から2020年3月までの2年間(医師9-10年目)にアメリカのマサチューセッツ州ボストンにあるハーバード医科大学の主要関連医療機関の一つであるDana-Farber Cancer Institute、Brigham and Women’s Hospital、Harvard Medical Schoolへ研究留学の機会をいただきました。
国内留学の経験を活かし、世界屈指の研究機関において、さらに深く大腸癌の研究してみたいと思い海外留学に挑戦しました。私が選んだOgino Labは荻野周史教授が率いる研究室です(https://www.ogino-mpe.org/)。当研究室では、医学の病理学(Pathology)と公衆衛生学の疫学(Epidemiology)を融合した新しい学問分野である“分子病理疫学(MPE: Molecular Pathological Epidemiology)”をコンセプトにした研究をしています。 ハーバード医科大学公衆衛生大学院は約17万人の健常人を30年近くにわたって追跡している大規模コホートデータを所有し、当研究室では追跡期間中に発生した大腸癌サンプル(約17万人のうち約4000人が大腸癌を発症)を用いたMPE研究を行っています。追跡期間中に2年毎に詳細なライフスタイル調査(食事、運動、健康状態、薬の使用、家族歴などのアンケート)やサンプル採取(血液、便など)を行っています。さらに、追跡期間中に発生した大腸癌患者の組織サンプルを取得し、分子病理学的解析も行っています。これらの蓄積されたデータを用いた包括的解析により、“アスピリンはPTGS2(COX-2)を阻害することによって、大腸癌患者の死亡率を低くする”、“赤身肉・加工肉食など西洋式食生活の人は、細菌Fusobacteriumにより引き起こされる大腸癌のリスクが高くなる”、“大腸癌内の細菌Fusobacteriumは、Tリンパ球(大腸癌内で癌増殖を抑制する主要な免疫細胞)と逆相関する”、などを発表してきました。このような医学だけでなく科学界全体へインパクトを与えることができる研究を行えるということは、海外留学の大きな魅力です。
当研究室は世界各国との多施設共同研究も豊富でした。米国、欧州、豪州、アジアの各研究機関が所有する大腸癌コホートデータを統合して巨大データベース(13万人の大腸癌患者)を用いてMPE研究を行っています(https://www.fredhutch.org/en/research/divisions/public-health-sciences-division/research/cancer-prevention/genetics-epidemiology-colorectal-cancer-consortium-gecco.html)。さらに、世界のトップ研究者達と協力し英国の巨額の研究費(約30億円/5年間)を獲得し、大腸癌と腸内細菌叢について解明する研究を行っています(https://cancergrandchallenges.org/teams/optimisticc)。このような日本では経験することができない、巨大なサンプル数や豊富な研究費を用いた夢のある研究を肌で感じられたことは、海外研究留学の醍醐味です。 留学期間中は、久留米大学の先生方と定期的なWebミーティングを通して様々なことを相談させていただきました。良い研究テーマが見つからずに何ヵ月も頭を抱えたり、思い通りの結果が得られず落ち込んだりしました。そんな時に久留米から応援してくださる先輩・後輩方に支えられながら、2年間の研究生活を送ることができました。最終的には3本の筆頭論文を執筆することができ、非常に有意義な研究生活となりました。 海外留学のもう一つの醍醐味は、様々な人との出会いです。荻野教授はじめ留学中に知り合った世界で活躍する研究者のScienceに対する真っ直ぐな姿勢を目の当たりにしました。目先の成果だけでなく、科学界へ自分の研究がどのように貢献できるかをシンプルに追い求めている姿に感動しました。さらに、ボストンには日本人研究留学生が多く、他大学の外科医や消化器関連の先生方と親睦を深めました。このような方々との出会いは、医師人生における財産となりました。海外留学での貴重な経験を活かして、今後は久留米から世界へ発信できるような研究をできればと思っています。 海外留学は楽しいだけではありませんが、苦労するだけの価値は十分あります!海外留学に興味のある先生方は夢と希望を持ち続けて挑戦して欲しいと思います。久留米大学外科学講座は、そんな方々を応援します!

消化器外科(肝胆膵) 後藤 祐一

Hôpital Paul Brousse Centre Hépato-Biliaire留学記

後藤 祐一
後藤 祐一
後藤 祐一

私は、2016年9月から2018年3月まで、フランス・パリ近郊に位置するHôpital Paul Brousse Centre Hépato-Biliaire(以下CHB:写真1)に留学させていただきました。
CHBでは同施設のセンター長であるRené Adam教授の元、多数の肝胆膵手術および肝移植手術を経験するとともに、転移性肝癌に関する臨床研究をさせていただきました(写真2)。CHBは、2017年時点で年間150例以上の脳死肝移植が行われるフランス最大の肝移植施設で、肝移植以外でも肝胆膵悪性疾患の治療に特化した専門治療施設です。CHBには国内だけでなくEU圏内の様々な国から多くの患者が専門的な治療を受けるために入院していました。留学中は臨床では、定例手術の助手として参加することとともに、移植のドナーが出た時にresidentやjunior surgeonと一緒に肝臓を採取しに行きました(Procurementと呼ばれます)。フランス全土を対象にドナー肝採取に行くため、車で片道3時間の道のりなら移植の専用車両で移動、3時間以上かかる場所は専用のセスナ機で近隣の空港まで向かいました(写真3)。現地の病院に到着すると手術室に直行し、同行した医師と一緒に2人で肝臓を採取します。採取した肝臓は冷却液に浸して、急いでCHBに戻りますが、時間帯によってパリ周辺はひどく渋滞するので、警察の白バイ2台が先導しながら物々しい雰囲気でCHBに向かうこともしばしばでした。CHBに到着すると肝臓を移植可能な状態にトリミングし、レシピエントのチームに肝臓を渡して一連のProcurementが終了します。日本の肝移植はhealthy donorから肝臓をいただく生体肝移植が主で、2010年の臓器移法改正後も脳死肝移植症例数は全国で年間60例程度にとどまっています。様々な背景から本邦における脳死肝移植に対するハードルは未だ非常に高く、CHBでの経験は非常に有意義でした。研究では大規模データベースを用いて、大腸癌肝転移原発巣の右側、左側での予後の違いを肝転移切除後の再発形式の違いから検討し、スペイン・バルセロナで開催されたESMOで口演発表を、アメリカ・シカゴで開催されたASCOでポスター発表をしてまいりました。癌の2大大会で発表させていただいたことは自分の医師人生にとって大きな自信と糧になりました。
最後になりますが、私は医学生の頃から“留学”に漠然とした興味がありました。今回の留学で、結果的に多くのものを得ることが出来ましたが、初めから確固とした目標や目的があったわけではありませんでした。そんな私だからこそ、留学はするべきなのか、何のために留学をするのか、興味はあるけれど悩んでいるといった医学生の方や研修医の先生方等に何かしらアドバイスできることがあると思いますので、ぜひ気軽にお声掛けください。

消化器外科(胃) 田中 侑哉

国立がん研究センター東病院国内留学記

田中 侑哉
田中 侑哉

私は、2020年4月より千葉県の国立がん研究センター東病院胃外科グループに国内留学させて頂いております。国立がん研究センター東病院は日本の胃癌治療を担う中核病院であり、臨床のみならずJCOGを始めとする様々な臨床試験への参加や、あるいは中心施設として主導を行っている病院です。日本の胃癌の中心施設の中で臨床を、若いうちに肌で感じた方がよいと久留米大学上部消化管グループ先輩医師よりご指導頂いた事がきっかけとなり、赤木教授に推薦して頂いた事から国内留学をさせて頂ける事となりました。私の国内留学の目的は、胃癌手術を年間300例近く行っている施設でのクオリティの高い手術(ロボット手術、腹腔鏡手術、開腹手術)の勉強と腹腔鏡手術の技術認定の取得です。目的を果たせる様に日々努力を継続しています。
国内留学を経験させて頂いている中で、一番の財産は高いモチベーションを持った他大学出身または医局に属さずに頑張っている同志との出会いだと思います。日々の手術や研究に対して熱く語り合い、ライバルではありますが一生付き合っていきたいと思える仲間です。時に窮屈に感じ、九州に帰りたいと思ってしまうこともありますが今後自分が成長するために大事な経験と考え一生懸命毎日を頑張ります。
最後に外科医不足のも関わらず、貴重な経験をさせていただき、久留米大学の医局の皆さまに感謝申し上げます。

消化器外科(大腸) 仕垣 隆浩

国立がん研究センター東病院留学記

仕垣 隆浩
仕垣 隆浩
仕垣 隆浩

2019年4月から2年間、国立がん研究センター東病院大腸外科に国内留学する機会をいただきました。
国立がん研究センター東病院大腸外科は国内トップクラスのhigh volume centerで結腸直腸癌の手術を年間450例以上行っており、そのうち95%が腹腔鏡手術で行われています。内肛門括約筋切除術や側方リンパ節郭清などの高難度手術を日常的に行っており、その他にも他の病院ではなかなか手術出来ないような骨盤内臓全摘術や仙骨合併切除術なども積極的に行っています。また、腹腔鏡手術の教育にも力を入れており、内視鏡外科学会技術認定の取得率は高く、全国から多くの若手外科医が東病院大腸外科の手術手技を勉強するために集まっています。
東病院大腸外科は毎日2-3例の大腸癌の手術が行われており、1年目はスコピストや助手として週2-3例の手術を経験させていただき、骨盤解剖の知識、術野展開の方法、手術の流れ、鉗子の動かし方など東病院の手術の型を一から叩き込まれました。自分が入らない手術の時も手術室に行き、他のレジデントがどのような指導を受けているか聞き耳を立てて勉強する日々でした。2年目になると週1例程度腹腔鏡手術の執刀する機会を与えていただきました。内視鏡外科学会技術認定取得という目標のために、1症例1症例を大切にし、同世代のレジデントと手術ビデオを見て意見交換したり、腹腔鏡のトレーニング施設で縫合結紮の練習をしたり、文献を持ち寄って勉強会をしたりして日々切磋琢磨していました。 また、東病院大腸外科は直腸癌において経肛門的にtotal mesorectal excision(TME)を行うtransanal TME(taTME)を国内で最初に導入し、2020年までに600例以上の症例を経験しています。科長の伊藤雅昭先生は世界でもこのtaTME手術のトップランナーであり、日本のみならず、アジアを中心に世界各国から伊藤先生の手術を学びに留学生が来きています。私も伊藤先生のtaTMEの助手を数多く経験させていただき、taTMEの魅力と難しさを肌で感じることができました。taTMEは狭骨盤、再発病変、巨大腫瘍で下部直腸周囲の剝離が困難な症例などに特に有用であり、今後、久留米大学でもこのような症例に対してtaTMEが導入できるようにここでの経験を活かしていきたいと考えております。 東病院大腸外科は手術以外にも多くの臨床試験や手術機器開発に力を入れています。私も腹腔鏡下S状結腸切除術の新しいトレーニング機器の開発に関わらせてもらいました。新型コロナウイルスで現地での発表はできませんでしたが国際学会でこのトレーニング機器に関する発表する機会をいただき、貴重な経験となりました。
留学中は自分の未熟さに心折れそうになることも多々ありましたが、同世代のレジデントや家族に支えられながら2年間走りきることができました。この留学期間中にお世話になったスタッフの先生方や苦楽を共にした同僚たちとの出会いは自分にとってかけがえのない財産となりました。
この2年間でどれだけ成長できたかは自分ではわかりませんが、手術と向き合い続けた日々は間違いなく今後の外科医人生の糧となったと感じております。この留学での経験を活かし、さらなる自己研鑽を積みながら、大学に新風をもたらせるように一層努力していきたいと思っています。国内留学に興味のある先生がいればいつでも相談してください。

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