TREATMENT

心臓血管外科

<胸部大動脈疾患>

胸部大動脈は心臓の出口である大動脈弁を過ぎたのち、バルサルバ洞、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈で構成されます。疾患としては、血管がこぶ状に拡大する大動脈瘤や大動脈の壁が裂ける大動脈解離があげられます。当科では長年に渡り胸部大動脈手術に積極的に取り組んでおり、血管内治療も含めて年間80例以上の手術をこなしています。

<大動脈解離>

大動脈解離は内膜から中膜にかけて亀裂が生じ、中膜のレベルで長軸方向に裂ける疾患で、しばしば激烈な痛みを伴います。また症例によっては意識障害、下肢虚血、心筋梗塞など様々なお合併症を来たすことがあります。分類としてはスタンフォード分類が用いられ、上行大動脈に解離が存在する場合はスタンフォードA型、上行大動脈に解離が及ばない症例をスタンフォードB型と分類します。

  • スタンフォードA型

    スタンフォードA型

  • スタンフォードB型

    スタンフォードB型

  • 2020年改訂 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインより

    2020年改訂 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインより

A型の場合は心臓に近い場所に解離を認めるため、心タンポナーデ、大動脈弁閉鎖不全症、急性心筋梗塞を生じることがあり、緊急手術を行わなければ48時間で半分の患者さんがなくなるといわれています。手術は人工心肺を用いて一旦心臓を停止した後に、上行大動脈、もしくは上行弓部大動脈を人工血管に置換します。いまだ日本全国の死亡率は10%以上の難しい疾患ではありますが、当科では長年の蓄積された経験を生かして、年間30-40例の緊急手術を行い良好な結果を残しています。

スタンフォードA型大動脈解離

わずかな症例で保存的加療を選択しますが、ほとんどの症例が緊急手術となります。手術の目的は血管の裂け目の切除、心タンポナーデや急性心筋梗塞などでの突然死の予防になります。

  • 急性大動脈解離スタンフォードA型術前造影CT

    急性大動脈解離スタンフォードA型術前造影CT

  • 急性大動脈解離スタンフォードA型術後造影CT

    急性大動脈解離スタンフォードA型術後造影CT

B型の場合は80%の症例で保存的加療(降圧治療)が選択されます。痛みのコントロールがつかない症例(破裂しかけている)、腹部主要分枝の虚血を認める症例、下肢の血流障害を認める症例には積極的に緊急ステントグラフト内挿術やバイパス手術を行います。

スタンフォードB型大動脈解離

80%の症例で保存的加療(降圧療法)を選択します。20%の症例で痛みのコントロールがつかない(破裂しかけている)、腹部臓器の血流が低下している、下肢の血流が低下しているなどの症状があり、緊急手術を行います。

<胸部大動脈瘤>

大動脈には常に高い圧がかかっており、動脈硬化や先天的に動脈が脆弱な疾患において動脈が瘤状に拡大する疾患を胸部大動脈瘤と呼びます。通常胸部大動脈瘤が55mm以上になると破裂の可能性があるため治療を行います。(55mmはあくまでも一つの目安で、瘤の形態や拡大スピードにもよります。)大動脈瘤はある程度の大きさになるまで症状が出ないため、レントゲン異常で発見されることが多く、その後CT検査で確定診断に至ります。破裂した場合の救命率は著しく低下するため、55mm以上になると手術を行います。上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈それぞれ瘤化する可能性があり、部位により治療法も変わります。ステントグラフト治療については別頁で述べますが、上行大動脈瘤に対しては上行大動脈人工血管置換術、弓部大動脈瘤に対しては全弓部大動脈人工血管置換術、下行大動脈瘤に対しては下行大動脈人工血管置換術を行います。脳合併症や脊髄虚血など深刻な合併症を来たす可能性のある手術ではありますが、以前と比較し比較的安全に手術を行うことができるようになりました。

  • 上行大動脈瘤術前造影CT

    上行大動脈瘤術前造影CT

  • 上行大動脈人工血管置換術後造影CT

    上行大動脈人工血管置換術後造影CT

  • 弓部大動脈瘤術前造影CT

    弓部大動脈瘤術前造影CT

  • オープンステントを用いた全弓部大動脈人工血管置換術後造影CT

    オープンステントを用いた全弓部大動脈
    人工血管置換術後造影CT

  • 下行大動脈瘤術前造影CT

    下行大動脈瘤術前造影CT

  • 下行大動脈人工血管置換術後造影CT

    下行大動脈人工血管置換術後造影CT

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胸部大動脈(大血管)