TREATMENT

心臓血管外科

<動脈疾患>

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤とは、大動脈が主に動脈硬化(血管の老化)によって、伸展性や弾力性を失うことで、動脈壁が血圧に耐えきれず膨らみ、コブ(瘤)状に拡張した状態です。アインシュタインや司馬遼太郎が、この疾患で亡くなったことで有名です。多くは無自覚で症状に乏しいですが、拡大が進行し、破裂すると大量出血をきたし、大多数が死に至ります。

当科におきましては、年間約70例前後の腹部大動脈瘤手術を施行しています。昨今の腹部ステントグラフト内挿術(別途、ステントグラフトの稿を参照ください)をはじめとする、血管内治療旺盛の時代におきまして、低侵襲手術(身体に負担が少ない手術)の比率が増加していますが、遠隔期の再治療介入率(追加治療率)が高いなど、必ずしも万能ではありません。
このような腹部大動脈瘤に対する手術治療として、腹部ステントグラフト内挿術(足の付け根からバネ付き人工血管を挿入し、動脈瘤への血流を遮断して血栓化させる手術)および開腹人工血管置換術(開腹し、動脈瘤を人工血管に取り換える手術)が存在しますが、当科では、いずれの手法にも携わっている、血管外科医が、ステントグラフト内挿術と人工血管置換術を使い分けることで、患者さんの状態や解剖学的特徴を加味したベストな治療法を選択しています。

例えば、ステントグラフト非適応(ステントグラフト治療が向かない人)の腹部大動脈瘤 (図1-3)やステントグラフト治療後の持続的エンドリーク(動脈瘤内に挿入されたステントグラフトの脇から血液が漏れて、動脈瘤内に圧がかかり、破裂率が低下しない状態)による遠隔期瘤拡大例 など、血管内治療では根治が不可能な症例に対しても柔軟に対応しています。

  • 術前写真

    術前写真(図1)

  • 術中写真

    術中写真(図2)

  • 術後写真

    術後写真(図3)

閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化により、多くは下肢の動脈が狭窄もしくは閉塞して、血流低下による症状(間歇性跛行、安静時痛、壊死・皮膚潰瘍)を呈する病気です。

腹部大動脈瘤同様、低侵襲治療が優勢であり、ステントやバルーン治療に代表される血管内治療が主体で、大変有効な治療法です。しかし、血管内治療のみでは、治療が長期に渡って完結しない場合もあります。特に、長区間閉塞病変など血管内治療非適応・不成功例や、総大腿動脈病変、血管内治療成績がいまだ安定していない下腿領域などには血栓内膜摘除術および外科的バイパス術を積極的に施行しています。
大動脈瘤治療同様、血管内治療および外科手術(バイパス術)のいずれの手法に対しても治療経験のある血管外科医が主治医・術者を担当し、最適な治療法を提供します。また、必要であれば血管内治療と外科的バイパス術を複合させたハイブリッド治療を施すことで、手術時間の短縮や手術の低侵襲化を狙っています。

その他末梢動脈疾患

その他、急性動脈閉塞性に対する血栓除去術、大腿・膝窩動脈瘤などの末梢動脈瘤、カテーテル検査の穿刺部トラブルや透析シャントトラブル、血管外傷、他科領域の血管合併腫瘍切除術など幅広い動脈疾患のニーズに対応しています。

<静脈疾患>

下肢静脈瘤・深部静脈血栓症

当科では、年間50例前後の下肢静脈瘤(表在静脈のコブ、図1)手術を施行しております。以前は、ストリッピング術(図2)といって、拡張した静脈をすべて除去する手術が主流でした。有効な治療法でしたが、時折、神経合併症を認めました。本疾患におきましても、低侵襲手術である下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(図3)を導入し、施行することで、合併症はほとんどなくなりました。

深部静脈血栓症に関しまして、当院では、血管外科医が抗凝固療法の選択や治療方針を決定しています。患者さんの状態や臨床症状より、最適な抗凝固薬の選択を行っています。

  • 静脈瘤外貌写真

    静脈瘤外貌写真(図1)

  • ストリッピング術

    ストリッピング術(図2)

  • 下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術

    下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(図3)

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血管外科(末梢血管)